LOADING
2026.09.09
読了時間目安
5分
会社設立の準備を進めるなかで、多くの方が手を止めるのが「資本金をいくらにするか」という問題です。2006年の会社法改正により、現在は資本金1円でも株式会社を設立できるようになりました。とはいえ、「1円でいいのか」「いくらが妥当なのか」と迷う方は少なくありません。
この記事では、これから起業・会社設立を検討している方に向けて、資本金金額の決め方の手順を整理します。

資本金とは、ざっくり言えば「事業を始めるための元手」であり、株主(自分自身を含む)が会社に出資したお金のことです。
資本金には、主に次の3つの役割があります。
・事業の運転資金になる(仕入れ・人件費・家賃など、最初の活動を支える)
・対外的な信用の目安になる(取引先や金融機関が会社の体力を見るときの材料の一つ)
・許認可の要件になることがある(業種によっては一定額以上の資本金が求められる)
設立時の資本金は、登記事項として誰でも閲覧できる情報です。つまり、取引先や金融機関が「この会社はどのくらいの規模・体力なのか」を判断する材料の一つになります。「最初の運転資金であると同時に、対外的な名刺の一部でもある」とイメージすると分かりやすいでしょう。

法律上は1円から設立できますが、実務上はおすすめしにくい、というのが正直なところです。
理由1)運転資金がほぼゼロになる
資本金は元手そのものなので、1円では事業活動の原資がありません。設立直後から、家賃・仕入れ・通信費などの支払いが発生します。資本金が極端に少ないと、開業早々に「社長個人からの借入」で資金を回すことになりがちです。
理由2)信用を得にくい
資本金は登記簿に載るため、取引先や金融機関の目に触れます。「資本金1円」は、相手によっては「事業を続ける体力があるのか」という不安につながることがあります。
理由3)融資審査で不利になりやすい
創業期の融資では、事業計画とあわせて自己資金(資本金)が見られます。資本金があまりに少ないと、「自己資金を準備できていない=準備不足」と受け取られ、審査で不利になることがあります。
なお、よくある誤解ですが、「資本金1円」は「設立費用1円」という意味ではありません。株式会社の設立には、登録免許税(最低15万円)や定款認証の費用などがかかります。資本金とは別に、設立手続きそのものに20〜30万円程度の費用がかかる点も押さえておきましょう。

資本金の額は、次の3つの場面で具体的な違いを生みます。
場面1)消費税:1,000万円が一つの分かれ目
設立時の資本金が1,000万円未満であれば、原則として設立1期目(および条件を満たせば2期目)は消費税の納税義務が免除されます。一方、資本金1,000万円以上で設立すると、1期目から消費税の課税事業者となります。
ただし、インボイス(適格請求書)発行事業者として登録する場合は、資本金にかかわらず課税事業者となります。また「特定新規設立法人」に該当する場合など、免税にならないケースもあるため、取引先との関係や事業計画をふまえて判断しましょう。
参考:国税庁丨No.6503 基準期間がない法人の納税義務の免除の特例(閲覧日:2026年6月25日)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6503.htm
場面2)許認可:業種によっては「最低ライン」がある
一部の業種では、許可の要件として一定額以上の資本金や財産が求められます。代表的な例は次のとおりです(金額は目安です。最新の要件や詳細条件は、厚生労働省や国土交通省など所管官庁のページで必ずご確認ください)。
・労働者派遣事業:基準資産額2,000万円以上+負債の7分の1以上+現金預金1,500万円以上 など
・有料職業紹介事業:資産から負債を引いた額が500万円以上 など
・建設業(特定建設業):資本金2,000万円以上(自己資本など、別途要件あり)
こうした業種を予定している場合は、設立後に増資する手間を考えると、最初から要件を満たす金額にしておく方がスムーズなこともあります。
参考:厚生労働省丨労働者派遣事業・職業紹介事業・募集情報等提供事業等(閲覧日:2026年7月9日)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/haken-shoukai/
場面3)融資:自己資金の一部として見られる
日本政策金融公庫などの創業融資では、自己資金がいくらあるかが重要な判断材料になります。資本金は自己資金の一部とみなされるため、ある程度の金額を入れておくことが、融資審査でプラスに働くことがあります。

「結局いくらが一般的なのか」が気になるところでしょう。公的な統計や実務の傾向を見ると、設立時の資本金は100万〜300万円程度に収まるケースが多いとされています。
おおまかな目安として、次のように考えると整理しやすいです。
・在庫を持たない一人会社(フリーランスに近い業種):50万〜100万円程度でも回しやすい
・一般的な小規模法人:100万〜300万円程度が一つの目安
・店舗・仕入れ・設備投資が必要な業種:300万円〜(初期投資+数か月分の運転資金を意識)
・許認可で要件がある業種:要件額を満たす金額(前章を参照)
一つの考え方として、「当面(3〜6か月分)の運転資金をまかなえる金額」を下限の目安にすると、設立直後の資金繰りが安定しやすくなります。

最後に、金額を決めるための手順を整理します。
step1)初期費用と運転資金を洗い出す
設備・仕入れなどの初期費用と、家賃・人件費などの毎月の固定費を書き出します。
step2)「最低◯か月分は手元に残したい」を決める
固定費の3〜6か月分を一つの目安に、開業後しばらく回せる金額を見積もります。
step3)許認可・税金の条件を確認する
予定する業種に資本金要件がないか、消費税の1,000万円ラインをどう考えるかを確認します。
step4)信用面で「見られても問題ない額か」を考える
取引先や金融機関の目線で、極端に低すぎないかをチェックします。
step5)以上をふまえて金額を確定する
「運転資金 + 許認可・税の条件 + 信用」の3点を満たす範囲で、無理のない金額に決めます。資本金は後から増資できますが、減らすのは手間がかかります。迷ったら「少し多め」を意識すると安心です。

資本金は1円から設定できますが、実際には「当面の運転資金をまかなえるか」「対外的な信用に足りるか」「税・許認可の条件を満たすか」という3つの視点で決めるのがおすすめです。
多くの小規模法人では100万〜300万円程度が一つの目安になりますが、正解は業種やビジネスモデルによって変わります。まずは初期費用と運転資金を書き出し、自分の事業に必要な“元手”がいくらなのかを具体的に見積もるところから始めてみてください。
Q.資本金は多ければ多いほどいいのでしょうか?
A.必ずしも「多ければ正解」というわけではありません。事業に必要な運転資金を確保しつつ、自己資金として無理のない範囲で決めることが大切です。「事業計画に見合った額か」を軸に考えましょう。
Q.資本金が少ないと、必ず融資は受けられませんか?
A.資本金は融資審査の要素の一つですが、すべてではありません。事業計画や自己資金全体、代表者の経験なども総合的に見られます。融資は難しいと決めつけず、早めに金融機関や支援機関に相談しましょう。
Q.設立後に資本金を増やすことはできますか?
A.できます。増資手続きにより、後から資本金を増やすことは可能です。ただし、手続きや専門家への依頼費用が発生するため、「許認可要件を満たしたい」「事業拡大に合わせて信用を高めたい」など、目的を明確にしたうえで検討しましょう。
Q.資本金を高くすると、税金は必ず増えますか?
A.資本金額が影響する税金もありますが、売上や利益の方が大きく影響します。消費税の免税ラインや、特定の事業に必要な許認可の条件など、「どの場面で資本金が影響するのか」を整理して判断することが大切です。
Q.個人事業主として始めてから法人化する場合、資本金はどう考えればよいですか?
A.基本的には「当面の運転資金をまかなえるか」「税・許認可の条件を満たすか」「信用面で見られても納得感があるか」を踏まえ考えましょう。個人事業で一定期間の実績がある場合は、その売上や費用を参考にしながら、無理なく準備できる自己資金の範囲で資本金額を検討するとよいでしょう。
この記事を読んだあなたに
おすすめの記事