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2025.11.24
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「個人事業主として数年間やってきたけれど、そろそろ法人成り(法人化)を考えるべき?」そんな風に悩んでいる方も多いのではないでしょうか。コロナ禍以降、補助金や金融政策、インボイス制度など、事業環境の変化も後押ししています。
「節税」「信用力アップ」「融資の幅拡大」といったメリットを求めて法人成りを選ぶ人が増えている一方で、「負担やリスクも大きい」「思ったより維持コストが重い」と感じる人もいます。重要なのは、損得や流行だけではなく、自分のビジネスにとって本当にベストなタイミングを選ぶこと。その具体的なポイントやメリット・デメリットをまとめてご紹介します。

まず、主なメリットを4つご紹介しましょう。
1. 税負担の軽減──1,000万円超は本格検討のサイン
課税所得が800〜1,000万円を超えてきたら、個人の所得税率より法人税率の方が低くなるゾーンに入ります。加えて、役員報酬や退職金、生命保険、社宅など法人ならではの経費も幅広く活用でき、節税策も広がります。「そろそろ税金が厳しくなってきた…」と思ったら、法人成りを検討し始める目安といえるでしょう。
2. 社会的信用力・屋号の違い──融資・採用で差がつく
法人名義は、取引先や金融機関からの評価がぐっと上がります。たとえば、融資の現場では
「信用金庫は基本的に社長個人の信用も重視する(事情によっては会社と個人の両方に審査が及ぶ)」一方、最近は日本政策金融公庫などで「社長個人に紐付かない(法人のみで審査)」融資商品も増えてきました。さらに、求人を出したとき「会社名義」の方が人材の応募が集まりやすいという声もあります。個人屋号だけのときより、契約や営業、採用などで“信頼の入口”が広がります。
3. 資本調達・事業拡大のパワーアップ
法人成りをすることで、クラウドファンディングやベンチャー投資、複数名義の出資なども視野に入り、資金調達ルートが大幅に広がります。公的制度(補助金や助成金)も法人限定枠が拡大傾向です。
4. 責任範囲の明確化──もしもの時の安心も法人の強み
合同会社や株式会社を設立すれば、基本的に「会社の借金=会社の責任」となるため、事業が万一うまくいかなかった場合にも、原則として自分の個人財産が直ちに差し押さえられることはありません(ただし、金融機関や信用金庫から融資を受ける際には「連帯保証人(社長)」を求められる場合も、一部あります)。

次に、デメリットを4つご紹介します。メリット・デメリットの両面を把握して選択することが大切です。
1. 設立・維持コストに注意
会社設立時は登録免許税や定款認証で20〜30万円程度、以降も法人住民税(最低7万円/年)、決算書類作成や社会保険手続きコストなど、個人時代より確実にランニングコストが増えます。
2. 社会保険の義務──キャッシュフローに注意
法人になると、従業員が一人だけでも社会保険(健康保険・厚生年金)の加入義務が発生します。個人時代の国民健康保険・年金より金銭的負担が大きくなるケースが多いため、特に“利益が安定しない間”は細かい資金計画が欠かせません。
3. 経理・税務・登記負担のアップ
複式簿記による記帳、毎期の決算・申告義務など、管理ノウハウと専門家(税理士等)との連携が重要になります。
4. 責任の範囲拡大に関する誤解
「万が一失敗しても、責任は会社に限定される」と言われますが、銀行・金庫からの融資条件次第では社長個人の全責任(連帯保証)となる場合もまだ多いので、融資契約をよく確認しましょう。「信用金庫は社長個人に紐付きやすい」「最近の金融公庫は法人名義だけの新型商品も増えてきている」など、実態も踏まえて比較が必要です。

上記に当てはまる場合は、具体的にシミュレーション(年商・費用・採用計画・融資計画等)をして、本格的に法人成りを検討するタイミングと言えるでしょう。

法人成りは事業を次のステージへ引き上げる強い追い風ですが、維持・運営の負担や責任範囲の広がりなど“デメリットにも目を向けた冷静な判断”が欠かせません。
このような心構えと準備が大きな武器になります。制度や市場環境が変化している今こそ、あなたの理想の事業ステージに合った“最適な法人成り”のタイミングを考えてみてください。
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