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会社設立

個人事業主が法人化(法人成り)するための手続きと法人化のメリット

2024.09.30

会社設立

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個人事業主が株式会社や合同会社などの法人を設立し、それまで個人で行っていた事業を引き継ぐことを法人化(法人成り)と呼びます。個人事業主から法人への転換は、ビジネスの拡大や成長において重要な一歩となることが多いです。しかし、法人化は単に事業形態を変更する手続きだけの問題でなく、税務や責任範囲、経営の透明性など、多くの面で影響を及ぼします。その中には、節税や信頼性の向上といったさまざまなメリットもあります。

この記事では、法人化することのメリットやデメリット、具体的な手続きや必要な費用、そして法人化後に必要となる手続きなどを詳しく解説します。

法人化は、一見難しそうに見えますが、基本的な手順を理解すれば誰でも可能です。

法人化の流れ

1. 会社の基本事項の決定

法人化の流れは、まず会社の基本事項の決定から始まります。これには、会社の名前、本店所在地、目的、資本金、役員の構成などが含まれます。これらは会社の「顔」を作る重要な要素でビジネスの成功に直結します。

2. 会社用印鑑の準備

会社を設立する際には、銀行印や角印など、複数の印鑑の準備が必要です。特に、代表者印は公的な認証を受けるため、業務上の認証に使用する印鑑とは別に保持する必要があります。代表者印の他に、会社設立時に用意しておくべき主な印鑑には、銀行印、角印、ゴム印があります。
代表者印、銀行印、角印の3種は印鑑屋さんなどでセットで購入することもできます。

法人実印は、契約書、取引の際の重要な文書、株主総会の議事録など、法的効力を持つ文書に押す印鑑として使用し銀行印は、法人口座を開設、使用する際に必要になります。 法人の銀行印は会社実印と兼用することが可能ではありますが、一般的には法人銀行印と会社実印はそれぞれ別々の印鑑で作成し、用途ごとに使い分けることをおすすめします。

角印は、請求書や発注書に使用され、会社名のみを記載します。ゴム印は、領収書や封筒に会社名や住所を記載する際に便利です。

法人登記では、代表者印、銀行印、角印をセットで準備し、ゴム印は必要に応じて後から作成できますが、創業時から申請や行政機関や税務署、社会保険事務所、金融機関など封筒で送付することが非常に多くなりますので、最初からゴム印があるとかなり時短になるので便利です。可能であれば最初からセットで購入しておくとよいでしょう。
また、筆者の経験上ですが、品質の良くない安い法人印はうまく押印できず、押印し直したり再送が必要なケースがあったので、可能であれば少し良いものを手配することをおすすめします。

法人登記の申請には、代表者個人の実印も必要となります。これには発起人や代表社員個人の印鑑登録証明書が必要で、株式会社では定款にも発起人の印鑑が必要です。

合同会社の場合、定款に印鑑は必須ではありませんが、定款に記載される情報は印鑑登録証明書と一致している必要があります。 発起人や代表社員個人が実印を持っていない場合は、法人登記申請前に印鑑登録を済ませておく必要があります。


個人の実印登録は、地方自治体で行うことができ、印鑑登録証明書の取得は役所やマイナンバーカードを利用したコンビニ交付で可能です。

3. 定款の作成

続いて、定款の作成です。定款は会社の「ルールブック」であり、会社設立の最も重要な文書です。定款には、会社の目的、資本金、役員の任期や選任方法など、会社の運営に必要な内容を詳細に記載します。これらの内容は、後の業務運営に大きな影響を与えるため、作成には十分な注意が必要です。

発起人は、会社の事業目標、事業内容、資本金、取締役の選出方法など、定款に含めるべき重要情報を決定し、それを文書に記載する責任があります。

定款に記載する主な内容

定款に記載する内容は、会社法によって規定されており、主に以下の3つのカテゴリーに分けられます。

・絶対的記載事項

必須で記載しなければならない事項でこれらの情報が不足している場合、定款は無効と見なされる可能性があります。具体的には、会社の正式名称、目指す事業の範囲、本社の住所、資本金の総額、および発起人の氏名と住所があります。

・相対的記載事項

法律で記載を義務付けられていないものの、記載がなければ法的効力を持たない事項。相対的記載事項には、株券の発行有無や役員の任期延長などが含まれ、会社の特定の運営方針を反映します。

・任意的記載事項

法的に記載が必要ではないが、会社の運営に必要と判断される任意の事項。 任意的記載事項は、役員報酬や株主総会の開催方法など、会社独自の運営ポリシーに関わる内容を含みます。

・公告方法の記載

株式会社では、決算公告などの情報公開手段を定款に記載することが求められます。電子公告を選択することで、コストを削減し、効率的に情報を公開することが可能になります。

定款の作成は、会社設立の初期段階で創業者や発起人が行うべき重要なステップであり、会社の運営基盤を築く上で欠かせない要素です。

4. 定款の認証(株式会社の場合)

法人設立の実践的手続きで定款の認証を行います。株式会社を設立する場合、定款を公証人により認証してもらうことが必要です。この定款認証は、定款に記載された内容が法令に適合しているかをチェックします。必要な書類としては、定款原案と公証役場への申請書が必要となります。

5. 資本金の払い込み  

次に、資本金の払い込みについてです。資本金は会社の信用力を示すもので、最低1円から設定可能です。しかし、事業を適切に運営するためには、ある程度の金額が必要です。資本金の払い込み方法は、現金を銀行口座に預けることが一般的で、その証明書が必要となります。 法人設立前の時点では個人口座に資本金が入金されていれば大丈夫です。法人設立ができたら法人口座を作成しましょう。

法人口座を作る時は大手銀行、地方銀行、信用金庫、ネットバンクなどそれぞれ特徴があるので、確認しておくとよいでしょう。ネットバンクは振込手数料やPCやスマホで管理できる手軽さがあり、信用金庫は融資の際に力強いサポートを受けられます。新規創業時は信用力がまだ低いことが多く大手銀行はハードルが高くなります。

6. 法務局での登記申請

登記申請は、設立準備が整ったことを法務局に報告し、会社の設立を公に認めてもらう手続きです。

必要書類は設立届出書や定款認証済証明書などがあります。 法人登記のタイミングは 3月決算の企業が多いため、4月から5月にかけては税理士が最も忙しい時期に入ります。この時期に決算審査や会計監査、法人税申告を行うと、専門家から十分なサポートを受けられない可能性があります。
その次に税理士の多忙期は1月です。2月から3月は個人の所得税確定申告の期間と重なり、税理士はこの期間も忙しくなりますので、決算月を考える際にはこの辺りも配慮して行うと良いでしょう。

資金繰りから決算月を検討する

資金繰りの状況を基に決算月を決定するのも効果的です。決算月を設ける際、法人税や消費税の申告・納税期限は決算の2ヶ月後に迫ります。この納税期限が資金繰りが厳しい時期と重なると、納税に影響が出る可能性があります。そのため、売上金の入金が少ない月、仕入れや経費の支払いが多くなる月など資金が不足しがちな月の2ヶ月前は決算月として避けるべきです。 登記のタイミングは事業の戦略も含めて考えるとよいでしょう。

7. 登記完了後の確認事項

法人化が完了した後も重要な手続きが多数あります。

①法人設立の登記が完了したら登記簿謄本と印鑑証明書を確認。これらにに間違いがないかを確認し、あればすぐに訂正手続きをおこないます。次に、法人設立に伴う税務手続きです。 開業届を税務署に提出し、法人税、消費税、地方税などについての課税基準等を確認します。 また、新規に法人設立した場合、社会保険や労働保険に加入する義務があります。これらの手続きも確認しましょう。

 ②法人設立により、ビジネスにおける契約関係も見直す必要があります。取引先との契約書や租借契約等、既存の契約が個人名義の場合、法人名義に変更する手続きを行います。これらの手続きは煩雑な作業となることもありますが、法人としての適切な運営を行うためには必要不可欠です。  

法人設立の登記が完了したからといって手を抜かず、これらの確認事項をきちんと行うことで、法人としてスムーズにビジネスを展開することができます。

③会社運営に必要な銀行口座の開設です。法人口座を持つことは、企業の社会的信用度を大きく高めるメリットがあります。

金融機関による審査が厳格であるため、法人口座の保有自体が企業の信頼性を示すものとなるのです。会社設立後に個人口座を引き続き使用することも可能ですが、それにより公私混同と見なされ、取引先や税務署からの評価が低下する可能性もあります。

法人口座を持つことで、取引先に対して安心感を提供し、ビジネスをスムーズに進行させることができます。 財務の透明性 法人口座を活用して事業関連の財務を一元管理することにより、会社の財務状況を明確に把握しやすくなります。

すべての支払いや振込を法人口座で行うことで、経理処理が効率化され、資金繰りや支出削減のための分析も容易になります。 法人クレジットカードが作成できる 法人口座の開設により、法人名義のクレジットカード作成が可能になります。

これにより、会社の経費を個人が立て替える必要がなくなり、経理処理も簡素化されます。 融資が受けやすくなる 法人口座を持つことは、金融機関からの融資を受けやすくする効果もあります。金融機関は企業の信用度や返済能力を評価する際、法人口座の保有を信頼性の高い指標とみなします。 個人事業の廃業手続き 個人事業主としての廃業手続きが必要です。

個人事業から法人への移行では、資産や負債の移行が必要となります。 保険への加入 労働保険と社会保険への加入手続きも必須となります。これらも手続きの流れと必要書類を理解し、適切に加入しましょう。社会保険の加入義務がある事業所が社会保険に加入しない場合は立入調査や罰金などの罰則(ペナルティ)がありますので注意が必要です。 

法人化にかかる費用 法人設立に伴う費用の概観

株式会社を設立するなら、手続きに実費だけでも約22~24万円の費用がかかります。金額の内訳は、収入印紙代(4万円)、定款の認証手数料(3~5万円)、謄本の発行手数料(約2千円)、登録免許税(一般的には15万円)です。ちなみに、合同会社は株式会社よりも手続きが簡素であるため、10万円ほどで設立できます。

創業支援等事業の支援を活用

市区町村が創業支援等事業者と連携して策定する「創業支援等事業計画」に基づき、各地でさまざまな支援策が用意されています。これらの支援を活用することで、法人化にかかる費用を軽減することが可能です。具体的には、設立費用の一部補助や低利の融資、税制上の優遇措置などがあります。

法人化は、初期費用だけでなく、継続的な経費も発生します。しかし、地方自治体や国の支援を活用することで、負担を軽減し事業を成長させることが可能です。法人化のメリットとコストを比較検討し、適切なタイミングでの法人化を目指しましょう。

1.会社設立時の登録免許税が半額

株式会社:最低税額15万円の場合…7.5万円(資本金の0.7%→0.35%)

合同会社:最低税額6万円の場合…3万円(資本金の0.7%→0.35%)

合名会社または合資会社の場合:1件につき6万円→3万円

2.創業関連保証の特例

無担保、第三者保証人なしの創業関連保証が事業開始の6か月前から利用可能です。

3.日本政策金融公庫の融資制度にかかる要件緩和など

新創業融資制度において自己資金要件を満たしたものとして取り扱われます 新規開業資金を利用する場合、特別利率の対象になります 。

参考:市区町村別の創業支援等事業計画の概要

まとめ

この記事では、個人事業主から法人への転換について、その全体像、具体的な手続き、法人化後の重要な点、および関連費用に深くまで踏み込んで解説しました。法人化はビジネスの成長を促進する重要な一歩ですが、慎重な検討と準備が必要です。皆さまのスムーズな法人化過程を支援するための参考になると幸いです。

また、法人化の過程で、コワーキングスペースの利用を検討することもお勧めします。コワーキングスペースは、柔軟な作業環境をリーズナブルに利用できます。さらに、同じ空間を共有する他の起業家との交流の機会も生まれ、ビジネスの成長に寄与する新たなアイデアやコラボレーションが見つかるかもしれません。法人化と同様に、コワーキングスペースもまた、ビジネス展開の幅を広げるための有効な手段の一つです。

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