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2025.11.27
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5分
ピッチ資料(ピッチデック)は、あなたの情熱とアイデアを形にし、投資家の心をつかむための重要アイテムです。
スタートアップにとって資金調達は事業成長への大きな一歩。成功のカギは、事業内容そのものだけでなく「いかに魅力的なピッチ資料を作り上げるか」にあります。
では、どのような資料が投資家の興味を引き、資金調達を成功へ導くのでしょうか?この記事では、実践的かつ評価されるピッチ資料作成のノウハウを詳しく解説します。

スタートアップにとって、資金調達は成長を一気に加速させるチャンスです。
しかし、事業の内容が良くても、投資家の心を掴めなければ資金は動きません。
その分かれ道を決めるのが、“ピッチ資料”です。
投資家が1社に費やす時間は、平均でわずか数分。短時間で「このチームに賭けたい」と思わせるためには、数字だけでなく、ビジョンや情熱、そして「なぜ今それをやるのか」という“ストーリー”を伝える力が必要です。
ピッチのつまずきポイントとしてよく聞かれるのは、
ピッチが市場規模の説明に終始し、投資家から「意義はわかるけれど、想いや魂が伝わってこない」といった内容の感想をもらうことです。
この場合の改善点としては、創業の背景にある原体験から語り始めるのがおすすめです。説得ではなく共感を生む構成にすることで、投資家の興味をグッと引くことができるでしょう。
『ピッチ資料は単なる報告書ではなく、事業の未来を描くストーリー構成書』
投資家が出資を決断するのは、「この人ならやり遂げそうだ」という確信です。数字を用いた裏付けも大切ですが、あくまで投資家の決断を後押しする要素と捉えると良いでしょう。

投資家が短時間で理解・共感できるピッチ資料には、一定の“流れ”があります。
以下の7つのパートを一貫したストーリーとしてまとめることで、聞き手の思考と感情を自然に導けます。
成功している資料ほど構成がシンプルで、「1スライドにつき1メッセージ」を重視しています。
そして投資家は「ストーリー性と再現性」を同時に求めるため、
「課題→解決→成果→成長戦略→未来」という一貫性がカギとなります。
たとえば、後述するAirbnbの初期ピッチ資料は10枚にも満たない構成でしたが、最初のスライドから「誰もが簡単に空き部屋を宿泊施設として提供できる社会」という世界観を示しました。
つまり「投資家が共感したのは“理念を通じた社会変化の物語」だったのです。

1スライド1メッセージ
優れた資料でも、伝え方が冗長では印象に残りません。投資家は1スライドあたり3秒から5秒で要点を判断すると言われています。
1スライド1メッセージの原則を守り、「この1枚で何を感じてほしいか」を明確に設計しましょう。
数字の羅列ではなく、意味を語る
単に数字を羅列すればよい、というわけではありません。
たとえばKPIを提示する際は、「登録者10万人」ではなく「半年で登録者が5倍に成長」と記す方が、変化のストーリーとして伝わります。
デザイン要素
グラフ・色・余白などのデザイン要素も、情報を整理し、感情を動かす演出として意識しましょう。
ストーリー性を重視
近年は、「ストーリー性が投資判断を左右する傾向」が強まっています。
ピッチコンテストなどでも、「動機の強さ」や「想いの背景」が投資家の共感を集めています。そんな事業を支える物語こそが、多くのスタートアップを際立たせる要素になっているのです。

Airbnb(エアビーアンドビー)のピッチデックは、課題・解決・市場性・プロダクト・収益モデル・チームなどを簡潔に示した14ページ構成です。
これらが合わさることで、投資家の信頼を勝ち取りました。
参考:SlideShare Airbnb ピッチデッキ(閲覧日:2025年10月21日)
https://www.slideshare.net/slideshow/airbnb-pitch-deck-from-2008/65585661
国内スタートアップの207株式会社は、物流ラストワンマイル領域で約5億円を調達。67ページ構成で、「社会課題の解決」と「メンバーの情熱」を結びつけたプレゼンが評価されました。彼らのピッチ資料は、成長見込みをデータで示しながらも、「なぜこの課題に挑むのか」を中心に据えた構成が印象的でした。
参考:207株式会社 note【ダウンロード可】5億円の資金調達で実際に使ったピッチ資料(全67ページ)を公開します!(閲覧日:2025年10月21日)
https://note.com/207inc/n/n00dc29c78e5f
最近のピッチイベントでは、投資家が「数字よりも人」に注目する傾向が強まっています。事業計画の完成度が同レベルであれば、「挑戦する理由が明確で、共感を呼ぶチーム」が選ばれるのも納得できるのではないでしょうか。
ピッチはもはやデータのプレゼンではなく、「共感を起点とした物語体験」へと進化していると言えそうです。

どんなに良い資料でも、話し方次第で印象は変わります。
ピッチイベントでは以下の準備を意識して臨みましょう。
想定質問の洗い出し
リスク・競合・資金使途などは必ず質問項目です。短文・具体的に答えられるよう準備をしておきましょう。
リハーサルの徹底
制限時間内に伝えたい要点を収められるように、リハーサルは必須です。滑舌・間・視線を録画でチェックするようにしましょう。
投資家ごとの調整
ベンチャーキャピタル※1は成長性を、エンジェル投資家※2は理念や熱意を重視します。相手によって重点を切り替えましょう。
※1ベンチャーキャピタル
将来性のある未上場のベンチャー企業やスタートアップ企業に出資し、成長を支援する投資会社。VCと略される。
※2エンジェル投資家
スタートアップ企業に、個人資金で出資する投資家。
また、ピッチ前後の質疑応答では、即答よりも丁寧な思考プロセスが評価されます。
わからないことを正直に伝えたうえで、「仮説ベースでこう考えています」と補足すれば、誠実さが伝わります。

ピッチ資料に関するよくある質問と、それに対するアドバイスをご紹介します。
Q1. ピッチ資料は何枚くらいが適切?
A. 一般的には10〜15枚が理想です。要素を詰め込みすぎるより、1枚ごとの完成度を高めましょう。ただし、投資家との関係構築が進んだ段階や、より詳細な事業計画の説明が必要な場合は、先述した207株式会社のように67ページという大ボリュームでも成功することがあります。重要なのは「枚数」ではなく、各スライドが一貫したストーリーで結ばれているかどうかです。
Q2. 売上がまだ少ない段階でも資金調達できる?
A. できます。特にアーリーステージでは「チームの想い」と「仮説検証の進み方」が評価対象です。
Q3. デザインはどこまで重視すべき?
A. 第一印象を大きく左右します。最低限、統一フォント・配色・余白設計は必須です。

ピッチ資料の目的は、単に事業を説明することではなく、「聞いた人の心に残る物語を伝えること」です。
そして、
「課題設定の深さ」、「解決策の独自性」、そしてそれを「形にするチームの熱量」。
この三要素が説得力を生みます。
ピッチ資料づくりは、事業を磨く最良のプロセスでもあります。
どんなに小さな種でも、「なぜ自分がやるのか」という動機から語られるストーリーには、人を動かす力があります。
あなたのピッチが、次の資金調達の扉を開く一歩になりますよう、応援しています。
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