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【知って得するシリーズvol.1】起業家のための税金・節税“得する”知識

2026.03.07

お金の知識

節税

税金

起業家

起業

読了時間目安

5分

今回から「知って得するシリーズ」がスタートします。
このシリーズでは、起業1〜3年目の個人事業主やひとり社長が「知っているかどうか」で大きな差がつく、お金まわりの知識や制度、ツールの使い方をテーマ別に解説していきます。

第1弾の今回は、「起業家のための税金・節税“得する”知識」です。
「申告はしているけれど、これで節税できているのか不安…」そんな“モヤモヤ”を抱えている方も多いのではないでしょうか。
税金は、売上が伸びてきたタイミングほど金額に差が出ますが、同時に制度が複雑で全体像を把握しづらいのが現状です。

今回は、派手な裏ワザではなく、起業家がまず押さえるべき「税金の基本的な仕組み」と「見落としやすい王道の節税ポイント」を、設備投資の優遇まで含めてご紹介していきます。

なぜ起業家は税金で損をしやすい?

なぜ起業家は税金で損をしやすい?

起業家が損をしやすい理由はシンプルで、税金が「知識がなければ節税できない仕組み」だからです。会社員のように会社が年末調整で処理してくれるわけではなく、個人事業でも法人でも、基本は自分で選択し、期限内に申請し、証拠を揃える必要があります。

もう一つの落とし穴が「税理士に任せているから大丈夫」という思い込みです。税理士はとても頼れる存在ですが、万能ではありません。事業の意思決定(設備投資の時期、役員報酬、法人化のタイミングなど)が共有されていないと、最適化できない場合もあります。大事なのは、税理士を疑うことではなく、経営者側も“税金の全体像”だけは持っておくことです。また、確認しないと節税策を提示されない場合も多く、税制が変わることもあるため、最新情報の把握は非常に重要です。

起業家が押さえたい“税金の基本的な仕組み”

起業家が押さえたい“税金の基本的な仕組み”

まず、「税金の基本的な仕組み」を理解すると迷いが減ります。起業家が関わる税金は、大きく分けると次の4に分類されます。

① 利益にかかる税金
個人事業なら所得税・住民税、法人なら法人税(+法人住民税・事業税など)です。どれも「売上そのもの」ではなく、基本的には利益(所得)をベースに計算されます。税の種類の整理は、国税庁の基礎資料も参考になりますので、確認してみましょう。

② 消費税
売上規模や取引形態によって影響が大きくなります。特に、売上が伸びてくると「いつから消費税がかかるのか」が資金繰りに直結します。

③ 給与・役員報酬にかかる税
法人化すると、役員報酬の設計が節税やキャッシュフローに影響します。個人事業のままでも、家族従業員の扱いなどが論点になります。

④ 将来のための積立・保険・共済
ここが“節税の王道” として知られる領域です。掛金が所得控除の対象となったり、将来まとまったお金を受け取るとき(解約時や満期時、共済金・年金受給時など)の課税が優遇されたりするため、リスクを抑えながらの節税が可能です。そして重要なのが、個人事業と法人では「活用できる制度」が異なるということです。
同じ“節税”でも、個人事業では控除・共済が中心となり、法人は役員報酬や設備投資の制度設計が中心となる傾向があります。

取りこぼしたくない「節税の王道」

取りこぼしたくない「節税の王道」

ここで紹介するのは、派手さはないものの、確実に差が出る領域です。起業初期は実行可能な施策から着実に取り組むことが重要です。

青色申告
青色申告は、あらかじめ税務署に「青色申告承認申請書」を提出し、きちんと帳簿をつけることで、白色申告より大きな控除や特典が受けられる申告方法です。

青色申告は、節税というより「節税の土台」です。控除や赤字の繰越など、選択できる幅が広がります。申告そのものはできていても、青色申告の要件や帳簿体制が弱いと取りこぼしが発生しやすいため、ここは「最低限押さえておきたい」部分です。

所得控除
控除は、課税される所得を下げる“正攻法”です。生命保険、社会保険、扶養、寄付など、人によって有効な控除が異なるので、毎年の見直しで差が出ます。
個人事業の節税は、まず所得控除が重要になってきます。

小規模企業共済・iDeCo
この2つは「将来の備え」と「節税」を同時に進めやすい代表格です。
小規模企業共済は、個人事業主や小規模法人の経営者向けの退職金的制度で、掛金が所得控除になる点が強みです。
iDeCoの掛金も所得控除(小規模企業共済等掛金控除)になり、所得税・住民税の負担を軽くできます。

ここまで対応できていれば、「最低限の節税はできている」と言えますが、ここをしっかり押さえないまま節税の“裏ワザ”に走るのは順序を誤っています。

接待交際費、個人事業と法人で何が違う?

接待交際費、個人事業と法人で何が違う?

「取引先との食事代って経費になるの?」
「法人では交際費の扱いはどう変わるの?」

接待交際費は、個人事業と法人でルールが大きく異なる代表的な項目です。
きちんとした知識を得ず感覚で処理してしまうと、経費として認められなかったり、法人化後に誤った処理につながったりしやすいので注意しましょう。

接待交際費とは
接待交際費は、事業に関係する相手に対して行う「取引先との会食、商談を兼ねた飲食、手土産・贈答品、接待目的のイベント費用」などの支出を指します。ポイントは、「事業との関係性が説明できるかどうか」です。プライベートな飲食や私的な付き合いによる支出は、接待交際費にはなりません。このルール自体は、個人事業・法人共通です。異なるのは、「どこまで」「どんな制限で」経費にできるかという部分です。

個人事業では、仕事とプライベートが混ざりやすく、自分自身が事業主体であり、生活と切り分けにくいという特徴があります。そのため税務上は、事業に本当に必要な接待かどうか、相手は誰か(取引先・見込み客など)、金額や頻度が常識的な範囲かといった点を確認します。

法人では、接待交際費は、
・原則:損金算入(経費化)に制限あり
・例外:一定条件のもとで損金算入が認められる

というルールです。中小法人の場合は、次の基本ルールのうち、どちらかメリットの大きい方を選択します。

・年間800万円までであれば、全額を損金算入できる
・接待飲食費の50%を損金算入

このように、法人では「上限」や「計算ルール」が明確に決まっているのが特徴です。さらに法人では、「誰が」「誰に対して」「何の目的で使ったか」を、個人事業以上に明確に求められます。会社のお金=株主や会社自体の資産、という位置づけになるためです。接待交際費は、「使えば節税になる」ものではありません。あくまで、事業上、本当に必要な支出をルールに沿って経費化するというものです。

特に法人では、接待交際費を増やして税金を減らすよりも「役員報酬設計、設備投資の優遇、共済・退職金設計」と組み合わせて考える方が、キャッシュとリスクのバランスが良いケースが多くみられます。

個人事業主のスマホ代・家賃はどこまで経費にできる?

個人事業主のスマホ代・家賃はどこまで経費にできる?

「スマホ代って全部経費でいいの?」
「自宅で仕事しているけど、家賃はどこまで落とせる?」

個人事業主にとって、スマホ代と家賃の経費計上は最も身近で、同時に一番ミスが起きやすいポイントです。結論から言うと、どちらも“全額経費”にはなりにくく、按分(あんぶん)が基本になります。

ここでは、「なぜ按分が必要なのか」「どう考えれば安全か」を整理します。

なぜスマホ代・家賃は全額経費にしにくいのか
個人事業主は、「事業」と「生活」が同じ人にひもづいています。そのため税務上は、仕事に使っている部分だけが経費となり、生活に使っている部分は経費することができません。スマホも自宅も、仕事専用ではなく生活と混ざりやすいため、「仕事に使っている割合」を合理的に分ける=家事按分が必要になります。この考え方は、国税庁の考え方にも沿ったものです。

スマホ代の経費計上の考え方と按分の目安
前述のとおり、スマホ代は事業に使っている分だけを経費にできます。

事業利用にあたる用途の一例
・仕事の連絡(電話・LINE・メール)
・取引先とのやり取り
・SNS運用、調べもの、クラウドツールの利用

経費計上できない用途の一例
・家族・友人との私的連絡
・プライベートなSNS閲覧
・動画視聴やゲーム

按分割合の考え方
スマホ代の按分は、実際の利用割合に応じて考えるのが基本です。

よくある目安
・事業での利用が多いフリーランス→ 50%前後
・副業・私用が中心→ 20〜30%程度

上記が目安ですが、正解の数字が決まっているわけではありません。大事なのは「自分なりに説明できる根拠があるか」「毎年の基準がブレすぎていないか」という2点です。按分を考えることが億劫だからといって、なんとなく毎月100%で計上していると、税務調査が入った場合、ほぼ確実に否認されますので注意しましょう。

家賃の経費計上の考え方と按分の目安(自宅兼事務所の場合)
自宅を事務所として利用している場合、そのスペース分の家賃を経費として計上できます。これもスマホ代と同じく、家事按分が前提です。

按分の考え方
家賃の按分は、面積を基本として考えます

たとえば、自宅が50㎡で仕事用のスペースが10㎡の場合、
家賃×(10㎡ ÷ 50㎡)=20%
を経費にする、という考え方です。「仕事部屋」としてスペースが明確に分かれているほど、説明がしやすくなります。

注意点
次のようなケースは、按分が難しくなります。
・リビングの一角で仕事している
・仕事とプライベートの切り替えが曖昧

この場合でも経費での計上がゼロになるわけではありませんが、按分割合は控えめにしておく方が安全です。

光熱費や通信費はどうなる?
家賃とセットでよく聞かれるのが、電気代・水道代などの光熱費やインターネット代などの通信費です。考え方は共通で、これらの費用も事業利用分のみ経費に計上できます。ただし、家賃よりもさらに私生活と混ざりやすいため、按分割合は家賃より低めになることが一般的です。

たとえば、以下のように項目ごとに合理的に分けることが多いです。
・家賃:20%
・電気代:10%
・ネット代:30〜50%

よくあるNG例

個人事業主のスマホ代・家賃の経費の計上で、特に多いNG例をご紹介します。
・自宅の家賃を「仕事をしているから」という理由だけで50%以上計上している
・按分割合を毎年気分で変えている

税務調査で確認されるのは、「数字そのもの」よりも「考え方が一貫しているか」です。多少控えめでも、説明できる按分のほうが、結果的に安全です。

節税としてどう考えるのが正解か

スマホ代や家賃の経費計上は、「攻めの節税」ではなく「守りの節税」です。ここで無理をすると、否認リスク、修正申告、精神的ストレスなどの方が大きくなってしまいます。

本格的な節税は、
・青色申告
・控除・共済
・設備投資の優遇

といった、制度として用意されている仕組みで行い、スマホ代・家賃は「正しく・控えめに」処理する。これが、長く事業を続けられる人の共通点です。

やりすぎNGの節税と、守りの考え方

やりすぎNGの節税と、守りの考え方

節税は“得”に見えますが、やり方を間違えると将来の負担やリスクが増えます。典型例は、節税の目的が先に立って、キャッシュが減る・資金繰りが苦しくなるパターンです。特に、設備投資や保険は「税金は減るが現金は出ていく」ことが多いので、順序を間違えると、事業の体力を消耗してしまいます。

また、制度の要件を無理に満たそうとして、実態とズレた運用をしてしまうケースです。節税は“グレーを攻める”より、長く続く形(継続できる帳簿・妥当な報酬・説明できる投資)で取り組むほうが結局のところ、効果が高いです。
節税を判断するときは「税額」だけでなく、次の3つで考え、バランスを崩さないのが鉄則です。

①キャッシュ(手元資金)
②手間(運用負荷)
③リスク(否認・資金繰り)

まとめ

まとめ

起業家の税金は、「知らなかった」で損が起きやすい領域です。ただし、派手な裏ワザに頼らなくても、青色申告・控除・共済(iDeCo含む)・設備投資優遇を“正しく組み合わせる”だけで、事業の守りは大きく強化されます。

まずは、自分がどの税目でどんな優遇を受けられそうかを洗い出し、取りこぼしがちな節税の王道を確実に行う。その上で、設備投資や法人化といった大きな意思決定の場面では、投資促進税制や経営強化税制なども検討に入れ、専門家と一緒に「攻めすぎない節税」を設計する。これが、キャッシュとリスクをバランスよく守る、最も現実的な“得する”戦略です。

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