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2026.08.12
読了時間目安
5分
起業に関心を持ち始めた方や起業準備中の方向けの「はじめてのビジコン入門」シリーズ。
シリーズ第3弾は、「ビジコン向けピッチ資料の作り方・基本チェックリスト」です。
前回vol.2では、自分に合うビジコンの選び方から募集要項の読み方、エントリーまでの準備の流れを紹介しました。書類審査を通過すると、次に待っているのがピッチ審査・最終審査に向けた「ピッチ資料づくり」です。一方で、「応募書類とどう違うの?」「初心者は何から手をつければいいの?」と戸惑う人は少なくありません。
今回は、①応募書類とピッチ資料の違いを理解する、②10枚前後の基本構成でたたき台を作る、③提出前のチェックリストで最終確認、の3点を中心に解説します。大切なのは、ピッチ資料はゼロから作るものではなく、応募書類を“翻訳”するものだという視点です。肩の力を抜いて、一緒に最初の1枚から組み立てていきましょう。

まず押さえておきたいのが、応募書類とピッチ資料は役割の異なる“別フォーマット”だということです。
応募書類は、いわば「読み物」です。審査員が時間をかけて文字情報を読み込むため、正確さや論理の一貫性が重視されます。一方ピッチ資料は、「見て聞く資料」です。数分という限られた時間で要点を伝え、いかに印象を残せるかが勝負になります。
両者は、伝える順序・情報量・表現方法(文字/図/数字)が大きく異なります。次の表でイメージをつかんでおきましょう。
| 項目 | 応募書類 | ピッチ資料 |
|---|---|---|
| 役割 | 読み物(読んで理解してもらう) | 見て聞く資料(短時間で印象づける) |
| 重視される点 | 正確さ・論理性・網羅性 | 要点の伝わりやすさ・印象に残るか |
| 情報量 | 多め(文字でしっかり説明) | 少なめ(1スライド1メッセージ) |
| 主な表現 | 文章中心 | 図・数字・キーワード中心 |
| 伝える時間 | じっくり読んでもらう | 数分で勝負 |
応募書類で書いた内容をそのまま貼り付ければよい、というわけではありません。ピッチ資料は応募書類の上位互換ではなく、同じ事業を異なる切り口で表現するものだと捉えると、ぐっと作りやすくなります。
〈審査員経験者コメント〉

㈱ツクリエ
インキュベーション
マネージャー
(中小企業診断士)
小川 剛司
審査員は、応募書類とピッチ資料を異なる観点でチェックします。
まず応募書類は、応募者が申請する事業の目的や事業の趣旨が今回の募集内容と合致しているかをチェックします。多くのビジネスコンテストなどは、税金を財源としていており、多くの場合は主幹する行政組織が解決したい社会課題に資するような内容であることが求められます。続いて申請内容が最初の項目から後半の項目まで一貫しており矛盾がないかをチェックします。審査員は一言一句読み込みますので、応募書類の誤字脱字などがないように丁寧に校正するとよいでしょう。
ピッチ資料については、内容面と発表面でわけてチェックします。審査員が一番重視するのは、発表面です。内容面は次のセクションで解説する内容が網羅されていれば問題ありません。それよりも発表者の本事業に対する熱意や決意を最も重視します。発表者がこの事業に対する強い動機をもっているか、この事業を最後までやりぬく覚悟はあるか、という点をみています。そのためピッチ資料作成後は、メンターなどと一緒に実際に時間を計って発表練習を行い、フィードバックを受けてブラッシュアップするとよいでしょう。

ピッチ資料は、おおむね10枚前後にまとめるのが基本です。初心者はまず、次の標準構成をたたき台にしてみましょう。
この構成のポイントは、2枚目に「自己紹介・想い・創業動機」を置いていることです。スタートアップの場合、立ち上げ期はまだ市場が形成されていないケースも多く、市場規模そのものよりも「なぜ自分がこの事業に取り組むのか」という動機や熱量が、審査員の心を動かす重要な要素になります。一方、すでに市場が存在するスモールビジネスであれば、「市場・機会(Market)」のスライドを加えて市場性を示すのも有効です。事業のタイプに合わせて、入れる・外す判断をしましょう。
また、ビジコンでは社会性・新規性・地域貢献といった審査基準が設けられていることがあります。該当する場合は、これらを強調する専用スライドを加えるのがおすすめです。

構成が見えてきたら、いよいよ応募書類をピッチ資料へ“翻訳”していきます。次の4ステップで進めると、迷いにくくなります。
step1)
応募書類の主要設問が、10枚構成のどのスライドに当たるかをマッピングする
step2)
各スライドの「キーメッセージ」を1行で書き出す
step3)
長文を、箇条書き・図・数字に置き換える
step4)
順序を「課題→解決策→ビジネスモデル→チーム→お願い」という自然な流れに整える
(市場・機会を入れる場合は、この流れの中に組み込む)
ここで意識したいのが“引き算”です。スライドに載せる数字は1〜2個に絞り、1スライドの文字量は100字以内を目安にすると、ぐっと見やすくなります。応募書類の情報をすべて詰め込もうとせず、「このスライドで一番伝えたいことは何か」を考えながら削っていきましょう。
〈審査員経験者コメント〉

㈱ツクリエ
インキュベーション
マネージャー
(中小企業診断士)
小川 剛司
わかりやすいピッチ資料とは、「各スライド間で論理の飛躍がなく一連のストーリーとして完結していること」です。審査員は各スライドを見た後に、次のスライドにどのような内容が続くかを期待しています。そのため、各スライド間のつながりを補うようなメッセージを入れるとよいとより伝わりやすくなります。

資料がひと通り形になったら、提出前に次の項目を確認しましょう。ビジコンでは「規定」を守れているかどうかも評価に関わります。
特に「8.」は見落とされがちですが、事業内容によっては法令や許認可の確認が欠かせません。少しでも気になる点があれば、早めに専門家へ相談しておくと安心です。
〈審査員経験者コメント〉

㈱ツクリエ
インキュベーション
マネージャー
(中小企業診断士)
小川 剛司
ピッチ資料を苦労して作成し、内容も完璧!練習もバッチリなのに、提出したら事務局から書類不備や法的問題を指摘されて再提出となるような、もったいない事態は避けましょう。ビジネスコンテストの多くは実施要綱や実施要領などのルールに従って運営されています。担当者はこのルールにのっとりピッチ資料のチェックを行います。運営事務局の多くは公的機関ですので、コンプライアンスをとても重視します。そのため、ピッチ資料の内容が金融商品取引法・薬機法・著作権法・特許・許認可の有無などにおいて法的に問題がない状態で提出することはとても重要になります。最終チェックを怠らないようにしましょう。

「構成は分かったけれど、自分のスライドがこれでいいのか不安」という場面は、初心者なら誰もが通る道です。そんなときは一人で抱え込まず、相談できる窓口を活用しましょう。
vol.2でも紹介したように、自治体の創業支援窓口、商工会議所の経営相談、大学の起業支援室(インキュベーション施設)、スタートアップ支援団体などが代表的な相談先です。多くは無料で利用でき、ピッチ資料の相談にも応じてくれます。StartupSide(株式会社ツクリエが運営するインキュベーション施設)でも、起業やビジコン準備に関するご相談を受け付けています。
相談に行くときは、ピッチ資料のドラフト(たたき台)を持参し、「特にこのスライドが気になる」と論点を絞ってフィードバックをもらうと、限られた時間を有効に使えます。

はじめてのピッチ資料づくりは、応募書類を“翻訳”するところから始まります。「10枚前後の標準構成をたたき台に作り、引き算で磨き、チェックリストで仕上げる」。この3ステップを踏めば、初心者でも十分に形にできます。
次回vol.4では、「審査員に伝わる話し方・時間配分のコツ」をテーマに、本番のプレゼンで力を発揮するためのポイントを紹介します。作った資料を“伝わる発表”につなげるために、あわせてチェックしてみてください。
Q.ピッチ資料は何枚くらいが目安ですか?
A.10枚前後が基本です。規定枚数があるビジコンでは、その枚数内に必ず収めましょう。
Q.応募書類の文章をそのまま貼ってもいいですか?
A.おすすめしません。長文は箇条書き・図・数字に“翻訳”し、1スライド1メッセージ・100字以内を目安に絞ると伝わりやすくなります。
Q.スライドを見やすくするコツはありますか?
A.色は3色以内、文字は24pt以上、数字は1〜2個に絞るのが目安です。提出前チェックリストとあわせて確認しましょう。
Q.行き詰まったら誰に相談すればいいですか?
A.自治体の創業支援窓口や大学の起業支援室、StartupSide(株式会社ツクリエが運営するインキュベーション施設)などに相談しましょう。ピッチ資料のドラフト(たたき台)持参がおすすめです。
Q.市場・機会のスライドは入れるべきですか?
A.必須ではありません。市場が未形成なスタートアップは自己紹介・想い・創業動機で熱量を伝え、市場があるスモールビジネスは市場・機会を加えるのが有効です。
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